『アンデスのリトゥーマ』
アンデス山中のインディオが多く住む地域では簡単に人が殺されたり、行方がわからなくなったりします。山奥の工事現場で3人の男の行方が次々とわからなくなります。この事件を捜査する治安警察のリトゥーマが主人公の推理小説です。
中学、高校生の頃は推理小説を読みまくりました。あまりに多くのものを読んだので、プロットやトリックのパターンが掴めるようになり、目新しさがなくなってしまいました。それ以後は推理小説を読まなくなりました。
10年程前にマリオ・バルガス・リョサの『誰がパロミノ・モレーロを殺したか』を読んだのが久しぶりの推理小説でした。同じ作家の『アンデスのリトゥーマ』は推理小説としては破格です。
物語の舞台であるナッコスには道路工事の作業員たち、酒場の夫婦、治安警察員2名しかいません。容疑者は限られています。しかし、隠れた容疑者が次から次へと出てきます。治安警察のリトゥーマは『誰がパロミノ・モレーロを殺したか』でも主人公として犯人探しをしました。
センテロ・ルミノソは共産主義の反政府ゲリラです。権力者や資本家、それらの手先となる管理職、外国人、研究者を敵とみなし、つかまえれば人民裁判にかけて処刑します。
ピシュタコは人間の脂肪を抜き取る怪物です。リャマかアルパカの骨で作った粉を人間に吹き付け意識をなくします。その間に生きたまま全身の脂肪を抜き取って燃料や軟膏として利用するのです。脂肪を抜き取られた人間はやがて死んでしまいます。
アンデスの山々にはそれぞれに守護精霊がいて、物語の舞台であるナッコスにはアプがいます。アプの機嫌を損ねると津波や落雷などの災いが生じます。アプの霊をなぐさめるために生贄として捧げる人間が必要なのです。
酒場の女主人は占い師であり、魔法使いでもあります。過去の世界も未来ものぞき見ることができ、ピシュタコやアプの力を封じる方法にも長けています。
この小説では男達の失踪の謎を解くために、各登場人物、悪霊、魔法、天災について考え合わせる必要があるのです。