「専門家でないことを目指す専門家」
京都で精神科の診療所を開業されている塚崎直樹先生のホームページに書かれている文章です。「精神科医の手法」として患者さんの診かたや病気に対するとらえ方についての基本的な姿勢をまとめられています。
「専門家でないことを目指す専門家」という部分に大変共感しました。私が常日頃感じている治療者としての心構えと全く同じだったからです。
「患者がどういう利用のしかたをしてもそれを受け入れようとします。おかしいな利用の仕方だなあと思っても、取りあえずはそれに従います。むしろそうしていると、次には最初予想していたのとはまた違う利用の意味が、明らかになることがあることを知っているからです。」
「目的もなく関わるというのは、こちらの設定した文脈の中で相手を見ないと言うことです。自分たちのやっていることは、最終的になんなのかわからないかも知れないと言う関わり方です。「来るものは拒まず、去るものは追わず」という言葉があります。相手次第でよいではないかという立場です。目的もなく関わるというのは、その言葉に近いものでしょう。」
「目的もなく関わるというと、では何もしなくてもよいのかという考えが出るかも知れません。しかし、目的がないと言っても、目標がないわけではありません。それは、相手を理解するということです。相手の立場、考え、感情、その他を理解しようとするのです。」「何故、理解を求めるのかというと、理解が深まったときに、思いがけない進展が起こることがあるからです。」
「できれば、治療者と患者が一緒に協力して答えを求めていければと思います。また、ある時、正しい答えが出たとしても、その答えがいつまでも正しいままであるかどうかはわかりません。いつでも白紙に戻って、出発点に戻って、考え直す姿勢を持ちたいものです。」