『神々は渇く』

読書・趣味・家庭 2022年11月15日

フランス革命に触れた歴史書はいくつか読みましたが、歴史書では恐怖政治の時代の雰囲気までは漠然としかわかりません。ディケンズの『二都物語』の終盤でその雰囲気を垣間見ることができますが、この本は最初から最後までどっぷりと当時の雰囲気を味わうことができました。

「勝利か、然らずんば死か」という言葉は軍人であれば常に直面する現実でしょう。フランス革命当時は政治家にもこの言葉が当てはまりました。主人公の画家は革命裁判所の陪審員として「革命の敵」に対して容赦なく死刑を求めます。革命を成就するためには、自身も死にゆくことになると覚悟してもいます。

このような感性は幕末の志士にも見られました。同列に論じることに大変ためらいを感じますが、アルカイダやイスラム国の戦士もジハードのために命を捧げることにためらいがありませんでした。サムライは滅私奉公の塊で、主君か、将軍か、天皇のために命を惜しみませんでした。一方でフランス人は個人主義で滅私奉公や狂信とは対極にあるように思います。そのようなフランス人にも革命の大義に命を捧げる感性があったことに驚きます。