グルタミン酸とアセチルコリン

時事問題 2020年08月06日

神経伝達物質にはさまざまなものがあります。中枢ではグルタミン酸が、末梢ではアセチルコリンが働きますが、下等生物ではこの関係が逆転します。中枢でアセチルコリンが働き、末梢でグルタミン酸が働きます。
この違いを利用した薬の一つにイベルメクチンがあります。この薬は2015年のノーベル生理学医学賞を受賞した大村智先生が発見しました。マクロライド系の抗生物質ですが、呼吸器感染症などの細菌感染には効果がありません。しかし、線虫やフィラリアなどの駆虫剤として効果があり、多くの人の命を救いました。
イベルメクチンは寄生虫の末梢神経細胞や筋細胞のグルタミン酸作動性塩素チャンネルに結合し、神経や筋肉を麻痺させて寄生虫を殺します。一方で、イベルメクチンを服用したヒトには無害です。血液脳関門があるために、イベルメクチンは中枢のグルタミン酸には影響しないからです。
イベルメクチンは新型コロナ治療薬としても試されています。グルタミン酸に関連する効果とは別に、コロナウイルスがヒトの細胞の核内に侵入する部分でこれを阻害するようです。