口腔外科医としての研究生活
口腔外科の多種多様な病気の診断や治療に関する勉強と、入院患者が抱える内科的・精神的疾患などに関する勉強、そしてアルバイトで行う歯科治療に関する勉強。まさに勉学に明け暮れる日々の中、夜間や休日は大学院生として「口腔ガンの放射線治療」をテーマとした研究を行っていました。日課としてハツカネズミ(マウス)の飼育やガン細胞の培養、ガンの移植と大きさの計測、病理組織検査などを行います。
また、大学院生は日々の実験の他、自分のテーマと関係のある研究の国際的進展レベルについて、常にフォローしておかなければなりません。とりわけ世界最先端の研究が発表される英語の論文のうち、関連性の深い領域の学会誌には毎月目を通し、読み込んでおくことが必要です。今では「GoogleScholar」で容易にチェックできるようになりましたが、私が大学院生だった1980年代にはインターネットがなかったため、途方もない時間と手間のかかる作業でした。
さらに研究計画の立案や結果の集計、統計処理、図表や発表スライドの制作、論文の作製となると、コンピューターが必要不可欠です。ところが、当時はウィンドウズも存在しなかったため作業は難航を極め、やむなく自家製のソフトを使って研究をまとめ上げました。当時はバブルの絶頂期で、「英語」「IT」「バイオ」が三種の神器としてもてはやされ、その知識と技術が重要視されましたが、私の研究生活は必要に迫られた形でこれらを駆使する毎日でした。