耳下腺マッサージの注意点
口の内外に多数ある唾液腺の中で最も大きなものが下顎の後方に左右一対ある耳下腺で、ここをマッサージすると、頬粘膜の耳下腺乳頭から 唾液が出てくることを実感できます。ただし、ドライマウスの改善を目的とした耳下腺マッサージは非常に有効であるものの、いくつかのケースにおいては問題 が起こる可能性があるため、注意が必要です。それは、耳下腺の周囲にあるリンパ節や神経、血管を刺激することにより、悪い影響を及ぼす場合があるからで す。問題が生じる例は下記の通りです。
口やのどのガンの治療後
口やのどのガンは手術で切除しますが、その際抗がん剤による化学療法や放射線療法を併用すると、その副作用により唾液が出にくくなりドライマウスが生じます。
唾 液腺マッサージはガン治療後のドライマウスに対しても有効ですが、耳下腺をマッサージすることは望ましくありません。ガンの治療後には、再発や転移につい て継続的に監視していく必要がありますが、口やのどへの再発、あるいは首のリンパ節への転移が認められた場合、マッサージを加えることによって再発巣や転 移巣を拡大させる恐れがあるからです。
不整脈
耳下腺のすぐ後方には、人体の中でも重要な 神経や血管が走行しています。特に頚動脈は血液を脳に届ける役割を果たすため、その付近にある頚動脈洞で血圧を調整します。ところが、耳下腺マッサージで 頚動脈洞を圧迫すると圧力が増すため、体が血圧の上昇と勘違いし、頚動脈の側を走る迷走神経が働いて脈が遅くなり、血圧を低下させてしまうのです。この反 応を頚動脈洞反射といい、中には失神してしまうケースもあります。
血栓症、動脈硬化症
血 中コレステロール値が高いなどのメタボリック症候群(脂質異常症)は、血管がもろくて詰まりやすく、血のかたまりすなわち血栓ができ やすい状態をいいます。頚動脈に血栓がある場合、耳下腺マッサージで頚動脈を刺激すると血栓が流れ出し、行き着いた脳の血管が詰まって脳へ血液が届かなく なり、その結果脳梗塞を起こしてしまいます。
口腔内には各所に多数の唾液腺があるため、マッサージを行うと唾液がよく出ます。従って上記の問題がある場合 は、口腔内のみ唾液腺マッサージを行うとよいでしょう。