記憶
神経科学的に記憶のメカニズムをまとめると、神経細胞の興奮状態(脱分極)が障害の長きにわたって持続することがあるということです。この状態を神経の可塑的変化といいます(神経の可塑的状態はこのほかにもあります)。
筋肉や血管の細胞が脱分極を続けると、攣縮(スパズム)という病的な状態となります。しかし、神経細胞ではこれが生理的な状態として生じ、脳のどこかで記憶として残るということです。
海馬は記憶をつかさどる場所とされていますが、海馬の神経細胞で長期の可塑的変化が起こるわけではありません。記憶に残るような刺激が脳に入る際に、海馬が中間的な役割を果たし、最終的には聴覚野、視覚野、味覚野などに保存されます。思考の記憶がどこに記録されるのかについては、この本では言及されていません。前頭前野かもしれませんが、いまのところ、部位が解明されていないのかもしれません。