『世界を変えた男 ゴルバチョフ』
1980年代後半に東側陣営が崩壊するまで社会主義諸国の体制についても指導者についても深い謎に包まれていました。とくにソ連については無機的で人の気配がしない冷たい国としか伝わってこず、指導者の素顔も公になることはありませんでした。
そのような社会主義体制を全てひっくり返してしまったのがミハエル・ゴルバチョフでした。世界中が注目していたゴルバチョフですが、彼の生い立ちや人となりについて報道されることはほとんどありませんでした。
1990年代前半に大学生協の棚卸でこの本が中古本として100円で売られていたので、飛びついて買いました。すぐにでも読みたかったのですが、大学での研究や診療に追われていたためにこのような分厚い本を読み出せずに本棚に置いたままになっていました。
長い間、存在を忘れてしまっていた本を最近見つけて読み始めてみると、社会主義国家の厳しい生活がまざまざと描写されていて引き込まれ、一気に読み通しました。ゴルバチョフは誰をも引き付ける人間的魅力を持ち、ロシア人では珍しく西欧の文化や歴史に通じ、酒を飲まず、誰よりも遅くまで働き続ける人でした。また、腐りきった教条主義と官僚主義がはびこるソ連の中で、社会主義を改革しようという意欲と斬新なアイデアを持つ政治家でした。一方で、社会主義体制の中で生き延びるために、理想や心情を隠して上に従うことができる二面性も持っていました。