偽薬の効果
外見が本物の薬と同じで薬としての薬効成分が何も入っていないものを偽薬といいます。こんな何の役にも立たないものを何に使うか疑問に思われるかもしれませんが、実際に使われています。
偽薬は治療に使われるのではありません。偽薬が登場するのは新しい薬の効果などを調べる治験の場です。効果を試したい薬と偽薬の二つで効果の違いがあって、試したい方の薬の方がよく効いた場合はその薬が役に立つということがわかります。
偽薬の効果は0で、効果があった部分は全て試したい薬の効果だということになりそうです。ところが実際はそうではありません。偽薬を使ってもある程度の治療効果が現れるからです。
「この薬を飲めばよくなる」と思って飲むとそれだけで聞いてしまうのです。これを「プラセボ効果」といいます。逆に偽薬を飲んでも副作用が出現します。これを「ノセボ効果」といいます。これらの効果にはエンドルフィン、ドパミン、カンナビノイドといった神経伝達物質が関与することもわかってきています。
患者—治療者間の関係が良好であるとプラセボ効果が出やすくなります。逆に治療者に対して不信感があるとノセボ効果が出やすくなります。病気を治すためには薬を飲む必要があるのだろうが、何となく飲みたくないという心理的葛藤がある、すなわち心理的にアンビバレントな状態に陥っている場合にノセボ効果が出やすくなります。