多臓器体外摘出腫瘍切除手術

学会・研究会 2025年07月01日

加藤友朗コロンビア大学教授が世界で初めて手掛け、見事に成功させた手術法です。腹部(腹腔内)にある大きな動脈である腹大動脈やその枝の腹腔動脈、上頂間脈動脈を巻き込む形で腹部に悪性腫瘍ができると手術不能といわれています。腫瘍と一緒に血管を切除すると内臓に血液が供給されなくなり、壊死してしまうからです。

また、この部分の腫瘍は内臓の奥深くの位置にあり、内臓を押しのけて腫瘍がある場所まで到達するのが難しい場所でもあるのです。そのために手術ができず、抗がん剤や放射線治療で延命を図ることが治療法となっています。結局、治すことはできないのです。

このような不可能な問題を可能とするのが「多臓器体外摘出腫瘍切除手術」です。この手術では腹腔内の全ての臓器(胃、膵臓、脾臓、肝臓、大腸、小腸)を腫瘍と共に一塊で摘出します。そのためにはすべての臓器を腹膜などから剥がし、血管を全て切断し、最後は腹大動脈や下大静脈と切り離します。

摘出した内臓は4℃に冷却し、臓器移植用の専用の保存液につけます。こうすれば血行がなくても臓器が壊死せずにすむのです。

摘出した内臓をひっくり返して裏側にある腫瘍を取り除き、内臓を再び元に戻して全ての血管をつなぎ直します。腫瘍と一緒に切除した血管はゴアテックスの人工血管で再建します。