神経を抜かない虫歯治療
虫歯を的確に削り、神経を保護する「単治・覆髄」(たんち・ふくずい)
「単治・覆髄」こそ、時間をかけて丁寧に、かつ細心の注意を払って治療を進める必要があり、このステップをきちんと行うことで歯の寿命を延ばすことができます。 歯科用マイクロスコープは「単治・覆髄」の治療品質を向上させ、MTAが虫歯菌に侵された神経を保護する「強力な武器」となるだけでなく、象牙質と歯髄の間に補綴象牙質(デンチンブリッジ)という新しいバリアを作り出します。
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単治と覆髄
大きな穴が開いた虫歯を削る際には、虫歯の部分とそうでない健康な部分(健全歯湿)を正確に区別し、虫歯の部分だけを確実に削り取る必要があります。虫歯の部分を取り残すと、その部分から虫歯が再び拡大する恐れがある一方、取り残しを恐れて虫歯を削り過ぎるのも問題です。健全歯質はできるだけ削らない方が歯を丈夫に保つことができますが、歯髄が露出すると抜髄は避けられません。
このように虫歯を削り取る治療ステップを「単治」(たんち)といいます。虫歯治療の中心となる重要なステップですから、歯科用マイクロスコープを使用することにより精度を向上させ、より良い治療結果を引き出す必要があります。
また、虫歯を削り取った後、歯髄に刺激が伝わらないようにセメントやレジンで保護するステップを「覆髄」(ふくずい)といいます。虫歯が深い場合に覆髄しておくと歯髄の表面部分が硬い象牙質に変化し、歯髄に刺激が加わりにくくなります。
このように、歯髄が持つ生体防護反応によって新たに生じた象牙質を補綴象牙質(デンチンブリッジ)といい、これらの過程を経ることにより虫歯菌の影響を受けた歯髄は健康を取り戻し、虫歯の治癒に至るのです。
治療費 12,100円
直接覆髄と間接覆髄
虫歯が歯髄に接近している場合は、難しい判断が強いられます。つまり、虫歯を全て削り取れば必然的に歯髄が露出するため抜髄が必要となりますが、虫歯菌の影響による歯髄の炎症が比較的軽い場合には、歯髄を温存できる可能性があるのです。
露出した歯髄を消毒してセメントやレジンで覆い虫歯の穴を緊密に封鎖すると、歯髄に新たな刺激が加わらず、安静な状態を保つことができます。時間の経過とともに歯髄の持つ自然治癒力が働き、歯髄の炎症は消失して歯髄炎に伴う痛みも消失します。このように露出した歯髄を直接覆って保護する方法を「直接覆髄」といいます。
一方、歯髄付近の虫歯は削らず残しておく方法もあります。虫歯の表面をセメントやレジンで封鎖して虫歯の進行を止めると、虫歯菌からの刺激が軽減され、歯髄が安静な状態となり歯髄炎が消失します。このような歯髄の保護法を「間接覆髄」といいます。
いずれの方法でも歯髄の表面は補綴象牙質に変化して刺激に強くなり、歯髄炎が生じにくくなります。これらの過程において虫歯菌を殺菌し、補綴象牙質の形成を促す強力な武器が「MTA」です。
MTAを用いた覆髄
MTAとは歯科治療に用いるケイ酸カルシウムを主成分としたセメントの一種で、保険適応外の大変高価な材料ですが、他のセメントにはない優れた性質を持っています。MTAとはMineral Trioxide Aggregateの略で、直訳するとミネラル三酸化物集合体となります。
MTAの持つ強いアルカリ性が歯髄の細胞を刺激し、補綴象牙質が形成されます。そのパワーは保険適応の覆髄剤である水酸化カルシウムよりも強く、殺菌作用もあります。
また、MTAは覆髄剤として用いられるだけでなく、穿孔封鎖剤、根管充填剤、逆根管充填剤としても優秀で、上質な自費治療には必要不可欠な材料といえます。
治療費 12,100円
単治・覆髄の治療手順
1 | 局所麻酔 |
2 | ラバーダム防湿 |
3 | 虫歯になったエナメル質・象牙質の削除 |
4 | 覆髄 |
5 | 仮封 |
1.局所麻酔
虫歯の周辺の歯肉に表面麻酔薬を塗布した後、局所麻酔薬を注射します。
2.ラバーダム防湿
治療予定の歯や周囲の歯にラバーダムを掛けることにより、治療箇所への唾液の侵入を防止し、使用する薬液が口やのどに拡がるのを防止します。
3.虫歯になったエナメル質・象牙質の削除
歯科用マイクロスコープを使用し、虫歯に侵されたエナメル質や象牙質を専用のラウンドバーやエキスカベーターで削除します。虫歯の取り残しはう蝕検知液「カリエスチェック」で確認します。
4.覆髄
滋髄を保護するため、窩洞の最深部にMTAセメントを敷き詰めます。
5.仮封
グラスアイオノマーセメントやレジンで窩洞を暫間的に充填します。
治療費 11,880円
治療例
虫歯の原因
歯の表面を覆うエナメル質は人体で最も硬い組織です。従って、石や鉄よりも硬いダイヤモンド製の器具を高速回転させ、時間をかけて少しずつ削り取らない限りは壊せないはずです。ところが、これほど丈夫な性質を持つエナメル質が虫歯菌に破壊されてしまうのです。
虫歯菌が出す酸は歯の主成分であるカルシウムやリン酸を溶かし、歯に穴が開けて虫歯を作り出します。初期の虫歯はエナメル質が白くなるだけですが、進行するにつれて穴が開きます。
虫歯の進行
エナメル質の内部にある象牙質は、骨と同じ硬さを持つ組織です。しかし、エナメル質と比べると軟らかいため、虫歯が進行するとエナメル質を貫通して象牙質に達します。硬度の違いにより、象牙質の虫歯はエナメル質の虫歯よりも進行しやすく、大きな穴(う蝕窩洞、う窩)が容易に出来上がります。
象牙質の内部には神経と血管、コラーゲンなどの複合組織である歯髄があり、これがいわゆる歯の神経です。象牙質まで達した虫歯には虫歯菌が無数に繁殖し、その一部は歯髄に入り込んで神経の炎症(歯髄炎)を引き起こします。同時に虫歯菌が産生する毒素も歯髄を刺激するため、歯が痛むのです
虫歯になれば、虫歯菌に感染した部分(感染歯質)を全て削り取り、その部分を何らかの材料で封鎖する必要があります。治療により歯髄への刺激を取り除くと歯髄炎が治まり、痛みが消失します。
歯髄炎
虫歯を全て削り取るという作業は、実はそう簡単ではありません。象牙質まで進んだ虫歯は大きくなりやすく、歯髄近くまで達しているケースも珍しくありません。また、虫歯で生じたう窩が歯髄に接している場合は、虫歯を削っていくと歯髄が露出してしまいます。露出した歯髄は原則、抜髄(抜いてしまう)となります。
神経を抜いた後は歯髄が入っていた根管を拡大・消毒し、詰めて治す(根管充填)治療が必要となりますが、単純な作業ではないため治療回数が多くなります。また、神経を抜いた歯には、全体を覆うかぶせ物(クラウン)を入れる必要があります。
残念なことに、これほど手間をかけて治療を行っても神経を抜いた歯は健康な歯と比べると問題が生じやすく、長持ちしにくいという実情があります。従って、歯の神経はできる限り抜かずに治すのが望ましいといえます。
歯髄炎
虫歯を全て削り取るという作業は、実はそう簡単ではありません。象牙質まで進んだ虫歯は大きくなりやすく、歯髄近くまで達しているケースも珍しくありません。また、虫歯で生じたう窩が歯髄に接している場合は、虫歯を削っていくと歯髄が露出してしまいます。露出した歯髄は原則、抜髄(抜いてしまう)となります。
神経を抜いた後は歯髄が入っていた根管を拡大・消毒し、詰めて治す(根管充填)治療が必要となりますが、単純な作業ではないため治療回数が多くなります。また、神経を抜いた歯には、全体を覆うかぶせ物(クラウン)を入れる必要があります。
残念なことに、これほど手間をかけて治療を行っても神経を抜いた歯は健康な歯と比べると問題が生じやすく、長持ちしにくいという実情があります。従って、歯の神経はできる限り抜かずに治すのが望ましいといえます。
断髄
虫歯が歯髄にまで進行すると、虫歯に近い部分の歯髄が「壊死」=死んでしまいます。歯髄か壊死するとよみがえることはないため、歯髄を抜く(抜髄)する必要があります。ただし、壊死の範囲が虫歯に近い部分だけに限局している場合は、壊死した歯髄のみを除去する「断髄」で済むこともあります。
壊死の範囲が狭い場合には、歯冠部の歯髄の一部のみを除去するスペック断髄(部分断髄)で済む場合もあります。部分断髄に対して、歯冠部の歯髄を全て除去する一般的な断髄法を全部断髄といいます。断髄が成功すれば、残った部分の歯髄は正常な状態に回復します。
断髄で重要な点は歯髄がどこまで壊死しているかを見極め、壊死部分を確実に除去することです。その見極めは難しいとされてきましたが、顕微鏡で観察することにより、残った歯髄の形態や色調、血流の有無に至るまでの確認が可能となりました。
断髄の治療手順 1回目 治療費 50,000円
- 局所麻酔
- ラバーダム防湿
- 虫歯になったエナメル質・象牙質の削除
- 断髄
- 断髄面にMTAセメントを充填
- 仮封
2回目(初回治療から1~4週間後) 治療費 30,000円
- 症状の有無を確認する。症状がある場合は1回目の治療を繰り返すか抜髄する。症状がない場合は以下の治療に進む。
- 局所麻酔
- ラバーダム防湿