大相撲人気
ウランバートルの町を歩いていると、元横綱朝青龍にそっくりな人を何度も見掛けます。彼の風貌は、現代のモンゴル人を物語るというべきでしょうか。確かに、モンゴル人が大好きなあの英雄にもちょっと似ている気がします。ガイドのラクチャさんに聞くと、朝青龍はモンゴル人にとても愛されたため、相撲ファンの増加に大きく貢献したそうです。しかし贔屓の朝青龍が引退してから、ラクチャさんはほとんど相撲を見なくなったということです。
モンゴルで相撲人気が下火となった理由は、実は白鵬にあるようです。彼は日本人女性と結婚しましたが、モンゴル人は男性でも女性でも外国人と結婚することを善しとしない国民性を持つようです。なぜならモンゴル人は人口が少ないため、外国人と結婚すると純粋なモンゴル人が少なくなってしまうからです。ユーラシア大陸で繰り広げられた壮大な歴史においては、異民族との婚姻を繰り返した結果、消滅してしまった民族も存在したかもしれません。あたかも清朝の支配階層であった満州人がほとんどいなくなったように。我々日本人の発想とは程遠いことを、モンゴル人は現実問題として危惧しているようです。
ところで、日馬富士はどうかと尋ねると、モンゴル人と結婚したから好かれているとのこと。歴史民族博物館の守衛さんは日馬富士が映っている相撲中継に熱中するあまり、仕事がお留守になっていました。いかにも相撲好きのモンゴルらしい光景です。 帰国した翌日、日馬富士が白鵬を破って全勝優勝し横綱昇進を決めましたが、そのときのインタビュー記事が印象に残っています。「正しい行いをしてきたことが昇進に結びついた。」本人は相撲道における精進のことを語っているのでしょうが、帰国直後の私には、日本人と結婚した白鵬を「正しい行い」(モンゴル人と結婚)をした自分が破ったのだと、モンゴル国民に向けてメッセージを発しているように聞こえました。
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