『ハムレット』

その他 2018年11月29日

2001年にネパール王家殺戮事件が報じられた際、ハムレットの最後の場面を思い浮かべました。ネパール王家の事件の真相は依然として藪の中ですが、シェークスピアの時代にもこのような惨劇には事欠かなかったのでしょう。
高校に通う娘のために買ったハムレットですが、久しぶりに読むと内容の多くを忘れてしまっていた、もしかすると理解していなかったことがわかりました。今回気が付いた点を二つ挙げてみます。
ハムレットが宰相の息子であるレイアーティーズとフェンシングの試合をする場面です。レイアーティーズはフランスの剣6本を用意します。貴族のオズリックがその剣の釣り紐を「懸索」と言っていますが、当時の気取った言い方としてこの言葉が使用されています。教養豊かな人物と設定されているハムレットでもこの言葉を知らなくて、オズリックにその意味を尋ねています。翻訳家の福田恆存が元の英語を訳すのにこの語を用いたというだけですが、懸索という中国語はあっても日本語としてはほとんど使用されないようです。「懸索」と検索しても中国語のページしか出てきません。例外的に一つの工学系日本語論文に出てくるだけです。「懸索」のくだりを読んで最初に「不空羂索観音」が浮かんだのですが、こちらの「羂索」は猟で獲物を捕まえるための縄のことです。
二つ目は墓掘り人夫のセリフに出てくる「腭」という漢字です。これで「あご」とルビが振られています。「あぎと」「あぎ」「はぐき」とも読むようです。中国の『維基百科』で調べてみると、「腭」は上顎で「顎」は上下顎のことを指すようです。