『冗談』 

その他 2019年01月08日

高校生の娘が読むのによい本はないかと近くの大型書店に行き、岩波文庫の中から選んだのがこの小説でした。しばらくして娘に「読んだ?」と尋ねると、「「面白くないから途中でやめた」と答えました。せっかく買った本なので代わりに読んでみると結構楽しめる作品でした。
著者のミラン・クンデラは戦後のチェコスロバキアを代表する作家です。1968年の「プラハの春」の際に政府の改革路線を支持したため、ソ連の軍事介入後は干されてしまいました。その後フランスに亡命し、1984年発表の『存在の耐えられない軽さ』で世界的に有名になりました。
鉄のカーテンの向こう側にいたソ連の衛星国の国民の立場や心情は複雑なものだったのでしょう。時代の推移とともに権力は移り変わり、それを支持する人々や反感を抱く人たちの情勢もよくなったり悪くなったりします。東側の体制、国家、地域と帰属するものの違い、個人としての独立心によって、風向きが大きく変わります。そのようなことが窺い知れて、堪能できました。

joudan