便秘
消化管に熱が生じ、便が乾燥して硬くなると便秘となります。大黄甘草湯に含まれる大黄は腸管の蠕動運動を亢進させ、排便させる働きがあります。便が乾燥してコロコロした便となると排便がさらに難しくなります。このような場合は大黄甘草湯に便を潤して軟らかくする働きがある芒硝が加わった調胃承気湯を用います。
大黄甘草湯や調胃承気湯に含まれる甘草は大黄の働きを和らげ効きを調整する働きがあり、その分瀉下作用が弱くなります。大黄甘草湯の甘草を除き、枳実・厚朴を加えたものが小承気湯です。甘草を除くことで瀉下作用が増強され、理気剤である枳実・厚朴が加わることで腹壁の緊張や膨満感を改善します。小承気湯に芒硝を加えて瀉下作用をさらに強くしたものが大承気湯です。
以上をまとめて大黄剤の瀉下作用を強いものの順に並べると、大承気湯、小承気湯、調胃承気湯、大黄甘草湯となります。これよりも弱いのが潤腸湯(血虚による便秘)と麻子仁丸(陰虚による便秘)です。
腸管が狭窄して通過障害があると便秘と痛みが生じます。このような便秘に対しては芍薬甘草湯や桂枝加芍薬甘草湯、桂枝加芍薬大黄湯を用います。これらは芍薬による平滑筋弛緩作用を利用するものです。
脾気虚により腸管の蠕動運動が低下している場合の便秘に対しては補中益気湯を用います。冷えにより腸管の蠕動運動が低下している場合には大建中湯や人参湯を用います。血瘀による便秘には桃核承気湯を、血瘀に炎症を伴う場合には大黄牡丹皮湯を用います。