眼・顔面・心臓・歯症候群
眼・顔面・心臓・歯症候群
ひぐち歯科クリニックが位置する茨木市別院町には大学の同級生である加藤穣治先生が歯科医院を開業しています。先日、用事で加藤先生がクリニックを訪れ、その際に「前から話していた論文が掲載された」といって、論文のコピーを置いて帰りました。
論文の内容は犬歯の歯根が異常に長くなる病気の症例報告です。病名は眼・顔面・心臓・歯症候群(OFCD症候群)といい、1992年に診断名が確定した病気です。加藤先生はそれより前の1986年から30年間に渡ってこの患者さんを診察し、継続的に犬歯の変化を観察して来ました。上顎犬歯は44.8㎜、下顎犬歯は35.9㎜に達したそうです。
この病気はBCOR(BCL-6 corepressor)遺伝子のヘテロ接合型の変異(heterozygous mutation)が原因で生じます。BCL-6はB細胞の分化やヘルパーT細胞への分化、B細胞リンパ腫、神経膠腫、心筋炎など、あちこちで登場してくる転写因子です。corepressorは補助抑制因子とか転写共役制御因子とかいい、BCL-6の働きを増強しそうです。heterozygous mutationによってBCL-6の機能に異常が出るのかと思って論文を読み進めると、AP-2の発現増加を引き起こすことが発症機序のようです。間葉系幹細胞のAP-2は骨や歯の新生を促進するからだそうです
Kato, J., Kushima, K., & Kushima, F. (2018). New radiological findings and radiculomegaly in oculofaciocardiodental syndrome with a novel BCOR mutation: A case report. Medicine, 97(49), e13444.
https://journals.lww.com/md-journal/Fulltext/2018/12070/New_radiological_findings_and_radiculomegaly_in.61.aspx