『オハイオ州ワインズバーク』
前回の米大統領選で取りざたされたラストベルトの真っただ中の州であり、代表的なスイングステートであるオハイオ州の田舎町を舞台とした連作短編集です。ワインズバークというのは架空の街ですが、筆者のシャーウッド・アンダーソンが少年時代を過ごしたオハイオ州クライドという町をモデルにしているそうです。
ウィリアム・フォークナーの『8月の光』でもミシシッピ州ジェファソンという架空の町が舞台となります。コーマック・マッカーシーの国境3部作の第1作『越境』もクローヴァー・デイルといういまはない町の近くの牧場が舞台です。
アメリカ中部や西部の田舎町は100年かそこらの歴史しかなく、伝統といったものはないのでしょう。架空の町であってもゴーストタウンであっても、その町の名は読者にとっては「何もない田舎」という記号的な意味しかないのでしょう。