キリストはエボリで止まった
著者はイタリアで上院議員を務めた政治家であり、医学部を卒業し、画家兼作家として活躍した多才な人です。時代はムッソリーニのファシスト党がエチオピアを植民地化しようとしてアフリカ戦争を始めた1930年代で、物語の舞台はイタリアの長靴の土踏まずに当たるバジリカータ州の貧しい農村です。食事は一日一食で、主食のパンと雑草以外は何も食べるものがないのが当たり前だったようです。
エボリというのはカンパーニャ州南部の町であり、ここから南方の山中に入っていくとバジリカータ州に到達します。『キリストはエボリで止まった』ということはバジリカータ州にはキリストの愛が届かない、神に見捨てられた貧しい土地を意味しています。また、キリスト教以前の魔術的要素を残した生活を送る非キリスト教徒の土地という意味でもあります。