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チーズでむし歯予防!?

チーズがむし歯を予防する

チーズがなぜむし歯をできにくくするのでしょう。診療の合間に論文を読み進めてみると、幾つかの答えが書かれていました。即ち「チーズに含まれるカルシウムやホエイプロテインが歯を守るのではないか」とチーズの成分の有効性について書かれたものが大半でした。幾つかの論文は唾液の緩衝能力を高めたり、pHを上げたりする効果について触れていましたが、その中にひとつ注目すべき論文が見つかったのです。

その論文は、プラーク中のpHの変動について述べていました。牛乳、ヨーグルト、チーズを飲食するとプラーク中のpHが低下しますが、その後のpHの変化を追っていくと、牛乳とヨーグルトはpHが低下したままですが、チーズだけは上昇していきました。pHが下がるとむし歯になりやすく、下がったpHが再び高くなるとむし歯になりにくいという話を思い出してください。このことから、牛乳やヨーグルトに比べ、チーズはむし歯になりにくい条件を持っていることが推し測れます。抄録のみですが、英語の論文をざっと読んでみてわかったことは、チーズにはむし歯を予防する有効な成分が含まれている、チーズを食べることが唾液によい影響をもたらし、むし歯予防につなげることができる、ということです。

ただし、チーズが唾液に与える影響はチーズそのものの効果なのか、あるいは「噛む」という行為による効果なのかを区別して調べた研究は見当たりません。また、チーズをよく食べる人はそうでない人よりもむし歯が少ないという論文も見当たりません。このような調査は大規模な集団検診が必要となるため、簡単には行えません。ましてやチーズをよく食べるグループとチーズを食べないグループを作り、5年後、10年後のむし歯の発生率に違いがあるかどうかを調べた実験など、ありえないでしょう。なぜなら、こうした研究には多数の研究者と協力者(被験者)が必要で、なおかつお金も時間もかかるからです。

「タバコの悪影響」「ガンになりにくい生活」といったテーマであれば、過去に幾つかの実験が行われてきました。それは、実験に要する労力や予算に見合うだけの有益な情報が得られると期待できるからです。しかしこのような実証実験は極めて例外的で、ほとんど全ての健康食品や健康法は実証実験を行っていません。含有成分に「体によい働きがある」ということが確認されれば、それを理由にして「体によい」と謳われますが、本当にその食品が健康に役立つかどうかを知りたければ、自ら人体実験をして確認するしかないのです。